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#1-2 介護業界の離職率改善ストーリー〜社会福祉法人が運営する介護施設に入った時の状態と現場の問題点〜

2023/06/08

離職率改善コンサルタントとして介護業界で活躍している小林武尊(こばやし たける)。
全4回に渡って、小林が所属する社会福祉法人で、離職率改善を目指すまでのストーリーをお伝えしています。

第2回となる今回は、介護業界で働き始めて、さらにその3年後、同じ介護業界ではあるもののヘッドハンティングされた社会福祉法人で実際に働き始めるお話です。

介護業界で働き始めてからの1年間

大学卒業後新卒で入社したパチンコ業界の企業を11年で辞め、その後エステ業界を経て介護業界に足を踏み入れることになった小林。介護業界で働くことになったきっかけは、転職エージェントからの紹介でした。数字管理ができ、人のマネジメントに興味があり、さらには自己成長も目指しているという点で、介護業界が小林にマッチしたといいます。

超高齢化社会のなかで介護業界それ自体に将来性を感じたものの、大変さがつきまとうイメージも強く、それほど興味を持てなかったといいます。しかし小林は、紹介された企業での面接時に志の高い社長と出会い、介護業界で働くことを決めました。

その結果、株式会社のマネージャーとして入社します。しかしこの時点で小林は介護業界は未経験です。そこで、まずは現場の状態を知るために現場で働くことにします。週1回の本部での社長への報告と、それ以外の4日間は実際に施設で働き、介護業界の現状を目の当たりにすることになります。

まずは、介護保険の仕組みを理解し現場でその内容を体感していくことと、小林自身のキャリアを活かして「不採算店舗の売上向上」、「現場で感じた課題をどのように改善していくかの提案と実行」、「人材管理」という3つがひとまずの大きなミッションとなりました。

2週間ほど働いたころ、聞こえてきたのは現場の職員が抱えている悩みでした。また小林自身も、社長の素晴らしい考えが現場に浸透していないことと同様に、現場の意見が社長に届いていないと気付かされることになります。つまり、経営を担う本社と、その現場である施設では意思疎通がなされていない状況ということです。

そこで、小林が経営陣の考えを現場の従業員に浸透させ、課題を一つずつ解決すると同時に、経営陣に現場の状況を報告する架け橋の役割を担うことを決断しました。そうしているうちに2ヶ月ほど経過したとき、少しずつ従業員から「社長の考えが理解できるようになった、自分たちもがんばりたい」という前向きな言葉が聞こえるようになってきたというのです。

社会福祉法人からヘッドハンティングされる

そうして働いて2年目が過ぎようとしていたころ、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長からヘッドハンティングの声がかかるようになります。小林の仕事ぶりを買ってのことです。約1年間ほど断りつづけるものの、理事長からの切実な声を受け、今度は社会福祉法人に参画することになります。

ちなみにこの記事を読んでいる人のなかでご存知のかたも多いかもしれませんが、特別養護老人ホームとは、要介護3以上の介護を必要とした人を対象とする公的施設のことです。要介護3は、一般的に生活全般において介護を必要としている状況のことです。24時間体制での介護が基本となり、ひとりで歩行が難しかったり、トイレや入浴の介助のほか、身の回りのことにも介護の手が必要となります。

介護を学ぶうえで特別養護老人ホームで勉強することは避けて通れないことだと考えた小林は、その後ヘッドハンティングを受け入れることに。

介護業界における株式会社と社会福祉法人の違い

小林が介護業界に入ったときの会社は株式会社で、その後ヘッドハンティングされたのが社会福祉法人です。小林は、介護業界においてこの組織の違いが働く人やその勤務態度にも大きな影響が現れています。

株式会社が運営している介護施設は、まず最初に未経験の人が挑戦しやすいというメリットがあります。株式会社は経営が傾くと幹部が入れ替わったり、そもそも会社としての存続が危ぶまれる場合も少なくないので、一度方針が決まれば、前向きに取り組める人が多いというのもメリットです。

一方、特別養護老人ホームを運営している社会福祉法人では、先述したとおり要介護3以上のお客様の対応をするため、未経験者や初心者が働くには厳しい現実が多いという難点があります。当然のように介護技術が求められる現実があるからです。

また保守的な考え方が根底にあるのか、新しい取り組みや仕組みに戸惑う人が多く、新しいことに繰り出そうと思っても反発が耐えないといいます。

もちろん運営形態に限らず、経営陣と現場の職員との意思疎通ができていないことが多い点など、変わらない課題もあります。

社会福祉法人で経験した大変な現場

理事長からのラブコールで社会福祉法人への参画が決まったわけですが、理事長から与えられたミッションは、当時おなじ法人の職員でありながら、敵対する関係性にあった労働組合の人たちと「半年後にはハグできるくらいの関係性」になることでした。

この社会福祉法人は、特別養護老人ホーム3施設のほか、ケアハウスやデイサービスなどの施設を抱えており、職員の数は総勢320名ほどになります。小林はこのなかでも一番問題が山積している施設で、いち職員として入職することになりました。株式会社が運営する介護施設での勤務経験もあったので、初心者だったわけではありませんが、学びに来たという姿勢を忘れませんでした。

しかし、厳しい現実が待ち受けていたのも事実です。草なぎ剛さんが主演していたドラマ「任侠ヘルパー」(2009年)よりもむしろ悪い状況といえるような状況でした。施設のなかで行われるリーダー会議では、施設長の発言に対して職員が「うるせーな」と暴言を投げつける始末です。初回のリーダー会議では小林に発言が許されることはなく、ただ暴言が飛び交うのを端で見ているしかなかったということです。入職したての小林にも、まともなコミュニケーションが取れていない状況がはっきりとわかる会議でした。

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株式会社ジャパンスタンダードでは、対話を重ねることを最重要として、介護業界での離職率改善に取り組むサービスを提供しています。気軽に相談を申し込むこともできますので、まずはホームページを確認してみてください。

今回は、社会福祉法人が運営する介護施設に入職して、芳しくない現実を目の当たりにした小林のお話でした。このあと、小林がどのような行動を起こして、どのように職員の心を掴んでいくのか、次回は、この施設での改善策についてお伝えします。