医療・介護業界におけるデータの管理について〜課題と解決策〜
2023/07/16
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2023/07/16
厚生労働省では、介護現場におけるICT化を進めています。
メリットは圧倒的な作業効率化です。
IT用語って聞きなじみがないと、何のことかわかりませんよね。
導入した方がよさそうなのは知っているけれど、その言葉の意味が何なのかそれを導入したらどんなメリットがあるのか?
課題はどんなものがあるのか?
実際の活用事例と、最後に厚生労働省が支援している「ICT導入支援事業」もご紹介しています。
ぜひ、最後までご覧ください。
この記事を読むとわかること
・ICTという言葉の意味がわかる(類似した用語とのちがい)
・日本のICT導入率
・介護現場においてICTの必要性、メリット
・ICT導入率の課題
・介護現場でのICT活用事例
・厚生労働省推奨の「ICT導入支援事業」
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術のことです。
以前はIT(Information Technology)という言葉が使われることが多かったですが、
ITはどちらかというと技術そのものをします。
一方で、ICTは情報通信に関する技術はもちろん、情報の活用や共有、伝達といった広い意味を持ちます。「ICTって何?分からない」と思っている方も、知らずしらずのうちに日々利用しているはず。
例えば、
・メールやSNSなどでのやり取り
・銀行ATMの利用
・スマートフォンやタブレット端末
・ネットショッピング
・電車やバスのICカード
・スマートスピーカー
など、日常生活のあらゆる場面でICT技術が活用されています。
類似した単語で、混同しやすい単語があるので、この際に区別できるよう簡単にご紹介します。
例えば今後、自社でも補助金などの国の支援を受けて導入しようとした際にも、募集要項の案内などでもよく目にする単語だと思います。
ITとは、コンピュータとネットワーク技術の総称の略で、IT化は、アナログな作業をIT(コンピュータ等)を使って効率化することをいいます。
身近な例として、車のカーナビが挙げられます。
車を運転して目的地に行くときに、これまでは紙の地図を見ていたのが、カーナビゲーションに目的地まで案内してもらうこともIT化による効率化のひとつです。
つまりIT化は「効率化のための手段」です。
DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。
簡単に言えば、「企業が情報技術を仕事や組織に活かして、より便利に、より効率的に変革していく」という概念です。
つまり、先ほど伝えたIT化は「効率化のための手段」であり、DXは「効率化する目的」であるという違いがあります。
そして、ICTもDXもデジタルテクノロジーを使うことは同じですが、ICTは双方向のコミュニケーションに特化しており、目的が異なります。
今までインターネットに繋がっていなかったモノをインターネットに繋げて便利にしていく、つまり「モノのインターネト化」ということです。
身近な例としては、話しかけるだけで音楽が聴けるスマートスピーカーなどがIoTといえます。
IoTは、DⅩを実現するための1つの要素といえます。
AIとは、アーティフィシャル・インテリジェンス(Airtificial Intelligence)の略で、
Artificial:人工的な
Intelligence:知能・知性
という意味を掛け合わせた言葉です。
一般的には、人工的に作られた知能を持つコンピューター、つまり「人工知能」と解釈されています。
AIには機械でありながら、学習する能力・深層学習という技術が備わっているため、人間が指示を送らなくても情報を分析し、自動で判断することが出来ます。
少子高齢化が進む日本では、介護業界のみならず働き手の不足が懸念されています。
業務の効率化を図るためにも、様々な分野において人工知能の活躍が期待され、実際に導入されている分野も増えてきています。
そもそも今の日本のICT導入率はどのくらいなのでしょうか?
出典:公益財団法人 介護労働安定センター 令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について(PDF)
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf
公益財団法人介護労働安定センターが令和4年8月に公表した「令和3年度『介護労働実態調査』結果の概要について」によると、8,742事業所のうち、
「パソコンで利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」と回答した割合が 52.8%と昨年よりも2.4%高くなっています。
ほかにも、「記録から介護保険請求システムまで一括している」が42.8%で昨年から3.7%増、さらに、「タブレット端末等で利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」は28.6%で昨年から6.6%上昇しています。
パソコンのほかに誰でも簡単に操作しやすいタブレットなどのモバイルデバイスを活用することで、介護業界でもICT化が急速に進んでいることが分かるでしょう。
ICTの活用については、従来の紙媒体での情報のやり取りを見直し、ICTを介護現場のインフラとして導入していく動きが求められています。
介護分野のICT化は、介護職員が行政に提出する文書等の作成に要する時間を効率化し、介護サービスの提供に集中する上でも重要であると言えます。
また、介護現場の情報をICT化することにより、ビッグデータの蓄積が可能となり、エビデンスに基づく介護サービスの提供を促進することにも繋がります。
間接的業務について、ICTを活用することにより、働きやすい環境作りに繋がり、介護業界のイメージを良いものに変えつつ、活躍の場を創出し、介護分野への多用な人材の参入促進につなげていくことが期待されます。
作業効率化することは、少子高齢化である日本は介護業界だけでなく、様々な業界・業種での人材不足の解消にも繋がるでしょう。
例えば、飲食店では、入店時から、セルフでできる仕組みが増えましたよね。
例)
・入店時に来店人数を入力、席番が表示されて着席
・メニューを自身のスマホから注文
・配膳ロボットがテーブルまで配膳、下膳
・セルフレジ、キャッシュレス決済などで支払い
など
一度も店員さんと関わらずに、来店したお客様のみで完結するお店も増えてきています。
もちろん、介護業界がここまで全部ロボット化できるとは限りませんが、日頃働いている作業が、
「これだったらロボット化できるかも?」など
「この作業がデジタル化すればもっと他の作業ができるかも」
など、あると思います。
”介護業界でなら”データ管理含め、どんな作業効率ができるか?
活用事例とその課題点も、後ほどの章でご紹介します。
介護業界の企業は、ICT化を進めるとさまざまなメリットを受けられます。
ここでは3つのメリットをご紹介いたします。
(1)介護スタッフの負担軽減・事務作業の効率化
(2)情報ろうえいリスクの軽減・スムーズな情報共有
(3)介護利用者や家族の満足度向上
ICT化によってバラバラに分散していた情報やデータをまとめ、一元管理することで業務効率化を図れます。
事務作業にかかる時間が減ることでスタッフの負担が軽減するでしょう。
出典:厚生労働省『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf
また何より、超高齢社会となった日本では、介護を必要とする人が増える一方で生産年齢人口が減少しており介護の担い手不足が問題となっています。
公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると介護事業所のうち6割以上が、訪問介護員においては8割以上が介護スタッフの不足感を感じています。
その点でも、作業効率化は今の介護業界に必須と考えられます。
事務作業に費やしていた時間を利用者へのサービスに充てられるため、サービスの質も向上できます。
また、介護事業所は病院や訪問介護事業所などとのデータ連携が不可欠です。
FAXなどの紙媒体や電話でのやり取りは連絡作業の手間がかかるうえに情報共有できるまでに時間差が生じます。
FAXを誤って送信するなどすれば、個人情報の重大な情報ろうえいに繋がるでしょう。
ICT化すれば各施設とリアルタイムでのデータ連携ができ、連絡作業の削減やスピーディーな情報共有が可能です。
ヒューマンエラーによる情報ろうえいリスクも低減できます。
上記でご説明した(1)、(2)の結果、介護の質を上げることができます。
今まで時間を割けなかったことができるようになったり
情報ろうえいリスクを軽減、回避することで安心・信頼のサービスができ
結果、介護利用者やそのご家族の満足度向上へと繋がります。
どんなにきめ細やかな仕事がしたいと思っても、日々の忙殺とした業務の中では限りがありますよね。
ICT導入により作業効率化できることは頼って、介護労働者の負担を減らし、結果的に介護の質を上げられることが一連の理想となります。
ICT導入には、システムの費用だけでなく必要なPCやタブレットを用意したりインターネット環境を整えたりとコストがかかります。
実態に合った機器やシステムを導入しないとコストに見合う効果を得られないので、慎重に判断する必要があるでしょう。
解決策としては、国の補助金や助成金をうまく活用することが挙げられます。
また、高齢の職員やパソコン操作が苦手な人はICT化に抵抗を持ってしまうため、慣れるまでは強いストレスを感じる方もいます。
情報共有がスムーズになる分、職員や家族とのコミュニケーションの機会がが減ってしまう可能性もあるでしょう。
解決策として、新しい機器やシステムを導入する際は、業務フローをきちんと確立し、丁寧に教育していかなければなりません。
実際に介護現場では、どのようにICTが活用されているのでしょうか。
ここでは3つの事例を紹介します。
現在、介護現場で活用されている代表的なICT技術は
・タブレットを利用した情報共有システム
・勤怠管理、給与計算ができるシステム
・見守りシステム
など、様々あります。
利用者情報を管理できる介護事業専用の情報共有システムがあります。
この情報共有システムを導入していれば、施設利用者の「状態、ケア内容、気付き」などの記録を直接タブレット端末に入力できるため、書類作成にかかる時間を大幅に削減することが可能になります。
また、情報共有システムを利用していれば、スタッフ同士の情報共有が容易になるだけでなく、利用者情報をタブレット端末ですぐに検索、確認することができます。
勤怠管理できるシステムはとくに、ホームヘルパーの事業所で活用されているシステムです。
スマホから出退勤を登録できる勤怠管理システムを利用すれば、移動の多いホームヘルパーがタイムカードの打刻をするためだけに事業所へ戻らなくても良くなります。
このようなシステムには、自動で給与計算してくれるシステムも一緒になっていることがほとんどで、毎月の労働時間や給与の計算にかかる事務作業を短縮させることが可能です。
介護現場で働く介護スタッフは、利用者の様子を確認しながら他の作業をおこなっていることがほとんどです。
1人で数人の利用者を担当するため、1人の利用者をずっと見ておくわけにもいきません。
担当利用者の離床や在室状況を常に管理するのは、介護スタッフにとってとても負担の大きい業務の一つです。
しかし、見守りシステムを導入することで訪室しなくても、離床しているのか、睡眠しているのか、トイレにいるのか、など利用者の様子を把握できるようになります。
とくに夜間などスタッフの人数が少ない時間帯は、見守りシステムがあることで夜間の見回り回数を減らすことができたり、利用者の異常をいち早く気付くことができたり、活躍してくれます。
厚生労働省では、ICT化によって介護職員の負担軽減を図るため「ICT導入支援事業」を行っています。
この制度を利用することで、 ICT化に必要なソフトやタブレット端末、インカムなどの導入費用について補助を受けられます。
もし気になった方は、公式Youtube動画もありますのでご覧ください。
【介護事業所におけるICTの導入・普及セミナー】
https://www.youtube.com/playlist?list=PLMG33RKISnWjzf2ZWmuIswkgMqx0C_5U6
上記セミナーの内容(タイトル・説明文・動画時間)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000934925.pdf
補助対象や補助要件、上限額は下記の通りです。
介護ソフト | 記録、情報共有、請求業務で転記が不要であるもの、ケアプラン連携標準仕様を実装しているもの |
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情報端末 | タブレット端末、スマートフォン端末、インカムなど |
通信環境機器等 | Wi-Fiルーターなど |
その他 | 運用経費(クラウド利用料、サポート費、研修費、他事業所からの照会対応経費、バックオフィスソフト(勤怠管理、シフト管理等)など |
事業所規模(職員数)に応じて設定
一定の要件を満たす場合は、3/4を下限に都道府県の裁量により設定。
それ以外の場合は、1/2を下限に都道府県の裁量により設定。
ICT導入支援事業は都道府県が主体となって実施されているため、申請方法や詳細は都道府県のホームページ等により最新状況を確認してください。
出典:介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きVer.2概要版(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/ICT_Guide_summary.pdf
いかがでしたでしょうか?
全てを取り入れるのは難しいと思うので、ぜひ1つすつ取り入れてみてはいかがでしょうか?
介護の作業効率化により介護する従業員の負担を減らし、介護の質の向上、そして介護利用者やそのご家族の満足度向上へと繋げていきましょう。
今回最後にご紹介したICT導入支援事業以外にも、IT導入補助金など、専門家の意見も聞きながら導入できるのでぜひ上手く活用されてみてください。
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