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#1-4 介護業界の離職率改善ストーリー〜企業理念作成 施設長や現場で足並みが揃うまでかかった約2年〜

2023/06/12

離職率改善コンサルタントとして介護業界で活躍されている小林武尊(こばやし たける)。全4回に渡って、小林が所属する社会福祉法人で、離職率改善を目指すまでのストーリーをお伝えしています。

最終回となる今回は、社会福祉法人が運営する介護施設での課題解決に取り組むなかで、職員全員の指針となるような企業理念を作成しようとするお話と、作った企業理念をどのようにして職員に浸透させ、行動指針として落とし込んでいくのかを模索するお話です。

企業理念作成へ

小林が社会福祉法人の理事長に対して企業理念を作ろうと打診すると、理事長からは前向きな返答がありました。小林と理事長、幹部を含めた4名でさっそく作成に取り掛かり、2ヶ月ほどかけて完成させました。

ただし、重要なのは理念の作成ではありません。これを幹部から現場の施設長へ、施設長から職員へと理念を浸透させていくことこそが大切なのであり、重要な課題です。

ここで理念を浸透させるのにふさわしい人材を、適切な役職へ配置するようにします。小林が改革を進めてきた施設の施設長は、トラブルや課題の声が上がっても上長に報告しないなどの不作為が発覚していたため退職し、その後の施設長には、法人のなかで経験のある人が引き継ぐ形となりました。

また、小林もこのタイミングで、社会福祉法人の三代目常務の役職につきます。

企業理念に共感する人、しない人

ここでは、一般的な企業理念について考えてみたいと思います。

企業理念、つまり言い換えれば経営理念ともいえることですが、これは、何のために経営をするのか、経営そのものに対する考え方や目標、目標へ到達するまでの手段のことをいいます。もちろん、社会に対してどんな価値やサービスを提供できるか、したいかといった内容が盛り込まれることもあります。

今回の小林のストーリーの場合、社会福祉法人の理念にあたるため、”企業”理念とは言い切れないのですが、その集団全体の指針になることには変わりありません。ここではわかりやすくするため「企業理念」という言葉で統一します。

この企業理念があることが、会社(今回の場合は社会福祉法人)のなかでとても重要な意味を持つことになります。従業員が仕事をする上での軸になり、モチベーション向上にも繋がります。ほかにも、企業理念に共感する人が増えることで働きやすい環境が作られたり、理念に共感した人が入社、入職したりすることにもつながります。

小林が離職率を改善するために携わっていた社会福祉法人に話を戻すと、法人内でこの理念ができたことで、理念に共感できる人、できない人に分かれることになります。今の理事長の考えに付いていこうとするかどうかです。

最初から理事長が提示した理念に100%同意できなかったとしても、理念に沿うように変わる意志のある人もいます。

しかし中には、理念に共感できないうえに、その伝達や浸透を面倒に感じたり、無理だと感じてしまう人もいます。小林は、そうした人には思い切って社会福祉法人からの”卒業”を勧めることにしました。この時点で一定数の人が辞職することを選んだそうですが、最終的な離職率の改善には理念の共有と浸透は欠かせないことだと考えています。

新しい”普通”へ向けた対話

この時から小林が採用にも積極的に携わるようになり、応募があった際にも、面接では施設の現状をさらけ出して話し、理念を伝えて理解してもらえる人を採用するよう徹底しました。

理事長を辞職させたい考えを持つ労働組合や、企業理念作成とその浸透が現実的ではないと考える一部の幹部からは、小林の行動に反発するかのような対応をする場面も目立つようになりました。あらゆることを問題視し始め、悪い癖が出て喧嘩腰になって話を進めようとする人もいました。

しかし、ここでこそ一人ひとりとしっかりと対話をして理念の浸透を進めるべきです。労働組合に入っている人や、立場に関係なく一対一で話す時間を設けるようにしたところ、半年経ったころには、労働組合が縮小傾向にあるという話を耳にするようになりました。立場や考えが違う人が集まっている以上、それぞれに合わせた言葉遣いや表現でしっかりと伝えていく必要があります。

業務内容についても、企業理念やその行動指針を念頭に置いてそれに沿わない内容については、職員個人に対して注意をするようになりました。ベテランの職員に対しても、行動指針に沿わない態度、発言はダメだということを徹底的に伝え続けました。

企業理念を掲げ、1年ほどかけて新しい”普通”を浸透させていく必要があったのです。結果的にはこの改革によって6割ほどの人が入れ替わりましたが、やっと同じ方向を向いて仕事ができる職員が揃い始め、スタートラインに立つことになります。

ここまで、小林が介護業界に入るまでの経験や、介護業界に入って感じた課題や現実、そしてそれを踏まえてどのように行動を起こしてきたかについてお伝えしました。全4回で小林の取り組みについて少しでも知っていただけたでしょうか。介護業界で働きながら、従業員が離れていってしまう現状に、小林が最初に感じたのと同じような悩みを抱えている人もいるかもしれません。

小林が設立した株式会社ジャパンスタンダードでは、対話を重ねることを最重要として、介護業界での離職率改善に取り組むサービスを提供しています。気軽に相談を申し込むこともできますので、まずはホームページを確認してみてください。