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GPT4への進化で世の中に何をもたらしたのか

2023/08/09

はじめに

人工知能(AI)は近年、日常生活における数多くの面で変革をもたらしています。その中でも自然言語処理の分野におけるOpenAIのGPT(Generative Pretrained Transformer)シリーズは、特に大きな進歩を遂げてきました。その進歩の歴史を簡単にたどりましょう。

GPTの最初のバージョンは2018年に登場し、その後の2年間でGPT-2とGPT-3が登場しました。そして、2022年にはGPT3.5が、続いて2023年にはGPT4が公開されました。それぞれのバージョンが目指していた目的は、より自然で説得力のあるテキスト生成能力の向上と、より広範で複雑なタスクへの適応力の強化でした。

GPT4の進化がどの程度なのかについて、よく話題に上がるものは、OpenAIから公表されている「多くの米国の州で弁護士の資格取得に用いられる『米国統一司法試験(Uniform Bar Examination)』の合格点を上回っただけでなく、人間の合格者の上位10%に入るスコアを獲得した」というものです。その他、生物学や美術史、微積分など知識や推論を問うほかの試験でも、GPT-3より高いスコアを獲得しているそうで、コンピュータ科学者がアルゴリズムの進歩を測るために考案したテストでは、ほかのどのAI言語モデルよりも高い点数をとったと公表されています。

GPT3.5

GPT4への進化を見る前に、比較対象である前モデルのGPT3.5の説明をします。

GPT3.5の主な特性

GPT3.5の特徴は、その巨大なパラメータ数と強力な生成能力にありました。300億以上のパラメータを持つこのモデルは、ウェブページ、書籍、新聞記事など、数百億件以上のテキストデータから学習しました。その結果、人間が書いたと思えるほどの自然な文章を生成する能力を持つまでになりました。しかし、GPT3.5には限界もありました。長い会話のコンテクストを維持する能力が欠けており、また不適切な出力を生成する問題もありました。

GPT3.5のモデル構造と特性

GPT3.5のモデル構造は、Transformerと呼ばれるアーキテクチャに基づいています。この構造は自己注意メカニズムを利用し、テキストの全体的なコンテクストを捉えることができます。GPT3.5のこの強力な構造により、その生成能力は人間のライターに匹敵するものとなり、その一方で不適切な出力を生み出す問題も引き起こしました。

GPT4

次に、2023年3月14日に公開されたGPT4について説明していきます。

GPT4の革新的な進化

GPT4への進化は、GPT3.5の限界を克服し、さらなる可能性を切り開くための一歩と言えるでしょう。この新たなバージョンのGPTは、モデル構造やアルゴリズムが改良され、その結果、新たな能力と特性を獲得しました。

GPT4のモデル構造の変化

GPT4のモデル構造は、前バージョンと比較して大きく進化しました。これにより、モデルの規模が大幅に拡大し、さらに多くのパラメータを含むようになりました。この変化により、GPT4はより広範で複雑なタスクに対応することが可能になりました。

GPT4の新たな能力と特性

GPT4は、前バージョンに比べて数多くの新たな能力と特性を持っています。その中でも特筆すべきは、視覚的理解の向上、精度の改善、長い会話の生成能力の強化、創造性の向上、そして不適切な出力の抑制といった点です。これらの新たな能力と特性は、GPT4が社会のあらゆる面でより有用なツールとなることを可能にしています。

GPT3.5とGPT4の明確な違い

画像を理解

GPT4の重要な進化の一つは視覚的理解の向上です。GPT4は、画像とテキストを結びつける能力を持っています。これにより、画像の説明、画像からのストーリーテリング、さらには画像内の要素を指定して文を生成するといった、従来のテキストベースのモデルでは困難だったタスクを可能にしています。

高い精度

GPT4はGPT3.5よりもはるかに高い精度を持っています。これは、より広範なデータセットで訓練された結果、GPT4がより精緻で洗練された予測を生成することができるようになったことを意味します。具体的には、テキストの生成、翻訳、要約、質問応答といったタスクでのパフォーマンスが大幅に向上しています。

会話はより長く

また、GPT4はGPT3.5よりも長い会話を生成できます。これは、モデルがより長いコンテクストを理解し続けることができるようになった結果です。OpenAIによると、従来の3,000語に対し、最新版は最大25,000語を処理できるようになったと公表されています。
この改善により、ユーザーとの対話はより自然で継続的なものになり、より長い対話を可能にしました。

よりクリエイティブに

GPT4は、GPT3.5よりも高い創造性を持っています。ユーザーからのプロンプトに対して、GPT4はより多様で意外性のある返答を提供することができます。これは、エンターテイメントやクリエイティブなタスクでの使用に大いに役立ちます。

不適切な回答が困難に

最後に、GPT4は不適切な出力を大幅に減らすための改良を行いました。これにより、AIの使用における倫理的な懸念を大幅に軽減し、安全性と信頼性が向上しました。

GPT4の進化による社会への影響

GPT4の進化は、ビジネスから教育、研究まで、社会のあらゆる領域に影響を及ぼしています。その強力な生成能力と広範な応用性は、ビジネスに新たな可能性を提供し、教育と研究の場では、より効果的なツールとして利用されています。しかしながら、その能力は倫理的な問題や法的な問題も引き起こす可能性があり、これらの問題への対応が求められています。

ビジネスへの応用と影響

GPT4はビジネスにおいて広範な利用可能性を示しています。カスタマーサービス、マーケティング、製品開発など、様々な分野でAIが活用されています。例えば、GPT4を利用したチャットボットは、24時間体制で顧客の問い合わせに応答することができ、企業が提供するサービスの質を高める一方で、人間のオペレーターによるサポートに必要なコストを削減します。

教育、研究への影響

また、教育や研究の分野でもGPT4の影響は顕著です。学生がレポートを作成する際や教師が教材を準備する際の補助ツールとして、あるいは研究者が文献を探索するためのツールとして、GPT4は有用な支援を提供します。

倫理的な考察と法的な問題

しかし、GPT4の進化は、倫理的な問題や法的な問題も引き起こします。その高度な生成能力は、誤情報の拡散やフェイクニュースの生成を容易にする可能性があります。また、人間が生成したと誤解する可能性のある内容をAIが生成することは、著作権やプライバシーに関する新たな問題を引き起こします。

まとめ

GPT4は、その強力な生成能力と広範な応用性により、我々の生活のあらゆる面に影響を与えるポテンシャルを持っています。しかし、その影響は必ずしもすべてが好意的なものではありません。GPT4がもたらす未来への展望は、その利点を最大限に活用しつつ、同時に引き起こす可能性のある問題に対処するための倫理的なガイドラインや法的な枠組みを整備することが求められています。GPT4に関連する研究と開発は、その可能性と問題点をさらに明確にしていくでしょう。
私達は、その結果を待ち望むと同時に、可能性と問題点に対するリテラシーを高め、適切な対応を模索していくことが必要となっていくでしょう。